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2008.06.17(Tue) バウンドのはなし むかしむかし。 あるところに、「バウンドする国」がありました。 そこは、自分が行った行動が自分に跳ね返ってくる国。 人に親切にすると、親切が。 いじわるをすると、いじわるが。 何かしらの形で、跳ね返ってくる国。 あるとき、一人の男が Aさんを刺し殺してしまいました。 そのことを知ったAさんの家族は とても、とても悲しみました。 泣いて、泣いて、涙が枯れるほど泣いて そして少し落ち着いた頃、気づきました。 「そうだ、ここはバウンドする国じゃないか」 それをきっかけとして、バウンドする国に 悲しみの連鎖が始まり、 そして、そのせいで、バウンドする国の人口は とうとう半分以下になってしまいました。 「こんな国を作ったのは私だ、私が何とかする」 そう言って バウンドする国の王様が、 今まさに人を刺し殺そうとしている人の前に 立ちはだかりました。 王様は誰かの代わりに刺され、 息も絶え絶えになりながら刺した人に言いました。 「バウンドさせるのは優しさや思いやりだけでいい。 君は今私を刺したが、ここで終わりにしよう。 この国と君がこれから良い方向に進んでいくことを 祈っているよ」 そうして王様は息を引き取り、 王様の言葉と行動は国中の知るところとなり、 国中に続いていた悲しみの連鎖は止まって、 バウンドする国は王様の望みどおり 少しずつたてなおしていきました。 王様の最期の行動を跳ね返して。 バウンドのおはなし。 [...READ MORE]
2008.06.11(Wed) うまくいかない人のはなし 「そこのお兄さん、今悩みがありますね」 男を引き止めたのは、背景と変わらない黒を着た占い師でした。 男は足を止めました。 「実は、仲のいい双子の妹と喧嘩をして、口をきかなくなってから もう一週間なんです」 「人が何かを『うまくいかないなぁ』と思うとき、 その原因はその人自身にあることがほとんどです」 「意味がよく分かりません。喧嘩の経緯も聞かず、 あなたは僕のほうに非がある、と言いたいのでしょうか」 「いいえ。あなたが『うまくいかないこと』を改善したいと思うとき、 解決への一番の近道は、あなたの中にこそある ということを言いたかっただけです」 「僕には少し難しい話のようです」 「ちなみに、『うまくいかない』と思っているのは あなたの方だけではないかもしれません」 「……なるほど。妹も僕と喧嘩したことを『うまくいかない』 と思っているのだとしたら、互いが原因で、互いに非があって、 喧嘩両成敗ということですね」 「はい」 「そして、解決する方法は、お互いが歩みよること、と」 「そうですね」 「帰りに、妹が好きな洋菓子店に寄っていこうと思います」 「はい」 男が去ったのち、別の男が占い師に声をかけました。 「あれ、今日はもう店じまいかい」 「はい。ケーキにあう紅茶を用意する為に、 今日は早く帰らなくてはいけません」 うまくいかない人のおはなし。
2008.05.11(Sun) しにたがりのはなし 死にたがりの少年がいた。 彼の部屋には、恰幅のいい黒猫が一匹。 「ねぇ、もう疲れちゃったよ」 さびしがりやの少年は曇った瞳で猫に語りかけた。 「生きていることがくだらないんだよ、学校にはバカな……くだらない奴しかいないし」 猫は、のどを鳴らしながらさして興味もなさそうに 顔をあらっている。 「自分の価値がわからないよ、誰か自分を殺してくれないかなぁ」 『バカじゃないの』 フンと鼻を鳴らしてから、猫は少年を見据え、そう言い捨てた。 「僕はバカじゃないよ」 『自分が牢屋にブチ込まれる恐れがあるのを知っていながら きみを殺すような奴がそこらへんにゴロゴロいるとでも思うの?』 「じゃあ死にたいなら一人で勝手に死ねってことかな」 『違うよ、きみは本当に視野が狭いね。 まぁまだきみの世界は家と学校とバイト先くらいにしかないから しょうがないのかもしれないけど』 「だから、どういうこと?」 少年は、少しだけ語気を荒げた。 『きみが死んだら、俺は毎日のごはんのアテに困るんだ』 「…………なるほど。すごくくだらない理由だね」 少年は虚をつかれたように、しかしどこかほっとしたように笑った。 猫も、目を三日月形に歪めた。 『だろう?でも俺にとっては大事なことだ』 「そうだね。じゃあ僕にとっての大きい……悩みとか 大事なことも、……死にたいってことも 他の人からみたらくだらないことなんだろうね、きっと」 猫は答えず、体を丸めて眠り始めた。 「おやすみ」 (……あぁ、そういえばそろそろキャットフードが なくなるなぁ。明日買いにいかなくちゃ……) しにたがりのおはなし。 [...READ MORE]
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